結核菌が宿主の免疫応答を抑制するメカニズムの一端を解明 ~新たな結核治療薬の開発に繋がる可能性~

 結核は結核菌という細菌の感染によって引き起こされ、今なお世界で毎年100万人以上の命を奪う重大な感染症であり、世界保健機関(WHO)が世界三大感染症の一つとして重点的な対策を求めている疾患です。結核の治療には結核菌に対する複数の抗生物質を一定期間投与する多剤併用療法が適用されますが、投与の条件が厳格に守られない状況下などで抗生物質に耐性を持つ多剤耐性菌の出現が大きな脅威となっています。このような多剤耐性結核菌にも対処可能な新たな結核治療薬の開発が世界的な課題となっています。
 結核菌は、免疫細胞の一つであるマクロファージの細胞内に寄生して増殖する特徴を持っています。通常の細菌はマクロファージに取り込まれると殺菌されますが、結核菌はマクロファージが殺菌作用を発揮するのに必要な分子の機能を抑える様々な病原因子を持っているため、マクロファージ内で殺菌されず、結核菌の細胞内への寄生が成立します(以降、寄生された細胞を宿主と呼びます)。結核菌が細胞内に寄生すると、体液中の抗菌分子(抗体など)による攻撃も受けることがなくなり、その結果、マクロファージが結核菌を守り増殖する場を提供することになってしまいます。これが、免疫系がなかなか結核菌を排除できない理由の一つです。したがって、結核菌の細胞内寄生に必要な病原因子の働きを阻害する方法を開発すれば、マクロファージの殺菌作用を強化でき、宿主の免疫応答を増強することで結核菌を排除できる可能性が考えられます。

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