免疫不全を伴うプロテアソーム関連自己炎症症候群(遺伝性の炎症性疾患)の発見とそのモデルマウスの樹立

 生体が恒常性を維持するためには、不要あるいは合成不良のタンパク質が適切に分解処理されなければならない。このタンパク質の分解処理に関わるタンパク質複合体(プロテアソーム)を構成するサブユニットタンパク質の遺伝子バリアント(遺伝子の違い)により、難治性の慢性炎症疾患(プロテアソーム関連自己炎症症候群)が発症する。今回、和歌山県立医科大学先端医学研究所改正恒康、邊見弘明(現在岡山理科大学獣医学部)、同大学皮膚科学金澤伸雄(現在兵庫医科大学皮膚科学)、琉球大学小児科金城紀子、岐阜大学医学研究科小児科学分野大西秀典、長崎大学原爆後障害医療研究所吉浦孝一郎、東京大学大学院薬学系研究科村田茂穂、兵庫県立大学大学院理学研究科水島恒裕らの研究グループは、プロテアソームサブユニットβ1iをコードする遺伝子(PSMB9)のde novo(注1)の新規のヘテロ接合性アミノ酸置換バリアントにより、免疫不全を伴うプロテアソーム関連自己炎症症候群という新たなタイプの遺伝性疾患が生じることを見出し、その病態を再現する新規のモデルマウスを樹立した。
 プロテアソームの機能障害を来す新たな疾患概念が提起され、そのモデルマウスが得られたことから、今後、プロテアソームの機能異常による病態の解明が進み、プロテアソーム関連自己炎症症候群、免疫不全などを制御する新たな治療法の開発が進むことが期待される。
 本研究成果は2021年11月24日(米国時間)に、国際誌Nature Communicationsに発表された。

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